2019年、参院選で「北海道選挙区」「比例代表」という単語までならまだしも、選挙に親しみがない詳しくない人々を飽和状態に追いやり、「ワーワーワー!」「頭がツーンとする!」「脳が理解を拒む!」と思考停止に追い込んだ魔法の言葉があります。
それが「特定枠」です。
本日は、「比例代表」にかかわる「特定枠」について解説します。
特定枠は「優先席」
結論はもう言ってしまいました。
「特定枠」というのは「優先席」。
自民党に限って言えば「夢の国のファストパス」をお持ちの人です。
ですので、例え「特定枠」候補者本人の得票数は少なくとも、当選順は
①特定枠の順位1位
②特定枠の順位2位 ※「労働」は1位のみなので除外
③個人得票数1位
④個人得票数2位
⑤個人得票数3位
……となります。
各政党の獲得した議席数に対し、個人の得票数が多い順から当選していきますが、「特定枠」はそれよりも優先されるのです。
今回の参院選では、5名の候補者が「特定枠」指定されています。
自由民主党:2名
れいわ新選組:2名
労働の解放を目指す労働者党:1名
現実的に、自民党が当選2名以下ということはありえないので、三木亨氏と三浦靖氏は、告示日に手続きが完了した時点で「お前は既に死んでいる」の逆バージョンが成立したと言えるでしょう。
なんだか同じ党内で「ズルくない!?」とかモメそうな制度です。飛行機の「優先搭乗」やテーマパークの「ファストパス」のように、周囲も納得できる運用がなされているといいのですが……。
「部分的拘束式名簿」特定枠!
まず参院選の投票用紙の2枚目「比例代表」。
これは「党別対抗戦」で、得票数の割合によって各政党の議席数が決まります。
(計算式については「ドント方式」で検索ください)
かつての参院選では有権者は各政党名を記入し、党が決めた名簿順に当選が決まっていきました。
(これを「拘束名簿式」と言いました)
しかし後に2001年選挙から、名簿順ではなくなりました。(「非拘束名簿式」)
主試合「党別対抗戦」で得た議席枠に対し、完全に得票数が多い順から当選が決まりました。
しかし2019年参院選選挙から、部分的「拘束名簿式」が復活したのです。
それが今回の「特定枠」です。
特定枠の候補者は個人選挙活動ができない
「優先権」を得る代わりに、特定枠の候補者は、選挙カーを出したり、ポスターを貼ったり、演説をしたり、チラシを撒いたり……原則として個人の選挙活動ができません。
全国から票を集めなくてはならない「比例代表」の候補者は、選挙期間中、全国を飛び回るのが通例です。
しかし「特定枠」を活用すれば、逆に身体的事情で迅速で頻繁な移動に不利であったり、飛び回ることや街頭演説が困難な方でも出馬可能ということを示したのが「れいわ新選組」の活用方法でありました。
その点については評価するのですが、今回の「れいわ新選組」が「特定枠2枠」を打ち出し、山本太郎氏を3番手に下げたことは、私は個人的には好きではありません。
その理由は以下に述べます。
「れいわ新選組」の特定枠の使い方
私の周辺を観察しても、「れいわ新選組」を応援しいているように見える人は、「山本太郎に活躍してほしい!」という実質「山本太郎ファン」。
その一念でもって、ハガキの宛名書きを手伝ったり、SNSで情報発信したりしています。(どの候補者であれ、政治的発言は非常にデリケートです。「え!? あんな人を支持しているの!?」と思われ、それを支持しない人たちに敬遠されるリスクを背負ってでも応援しているのです)
それもこれも「山本太郎を国会に!!」と期待しての応援であって、「れいわ新選組」の候補者なら誰でもいいーーわけではないはずなのです。
そのファン層の期待をストレートに受け止めるのではなく、「落選しても構わない」(当選してほしかったらもっと票を!!)とばかり、優先順位を下げて選挙を戦う。
「立派な覚悟!」「背水の陣!!」と持ち上げる方もいらっしゃいますが。敷かなくていい背水の陣を敷き、兵卒により汗を流せというのは、私にはただ殿のエゴのようにしか見えません。
また「れいわ新選組」には他の候補者の方だっていらっしゃるわけですが、その方がもし自力で100万票獲得しても、党として300万票、400万票超を獲得しなくては当選できないのです。
それは、候補者が少数にもかかわらず、れいわ新選組が特定枠を「2人」設定しているからに他なりません。
「他党から出馬した人の方が、個人獲得票数が大幅に少なくても当選できる」。
そうした試練を、自身の党の候補者・支援者に課すのは、立派どころかむしろ不誠実な行動に思えます。
果たして、山本氏あるいは「れいわ新選組」の「特定枠」以外の個人候補を支持する方々は、頑張って応援した挙句「特定枠を設定していなければ当選していただろう票数を取っても、当選しないこともある」そんな事態を期待して、応援したり票を投じているのでしょうか?
参院選「比例代表」の目安は100万票
山本氏自身も政見放送で
「山本太郎が100万票取れば1人目が、200万票取れば2人目が、300万票取れば山本太郎が国会に行けます」
という趣旨のことを仰っていました。(安全を見ると三百数十万票が必要、という説もあり)
「300万票取れば山本太郎が国会に行けます」
逆を言えば「300万票取れないと、山本太郎は国会に行けません」と言っているのです。
山本氏に国会に行ってほしい人たちに向かって。
しかし他党の、何度も選挙を経験したかなり名の知れたベテラン陣営ですら「100万票は厳しい」と焦っている話を聞きました。
そんな状況下、少人数の政党で「特定枠」候補を2人設定し、「山本氏1人で3人当選する分の票を集める」「特定枠以外の候補者の当選ラインのハードルを上げる」。それは、果たして現実的な話と言えるのでしょうか?
万が一の場合、山本太郎氏を応援していたはずなのに「これ誰?」という候補者だけ当選しても、納得できるか。
「れいわ新選組」に票を投じる方々には、そうした覚悟が求められます
。
「当選して欲しかったら300万票以上を」!?
言い方は千差万別あれ、私は「◯◯してほしかったら ◇◇しなさい」という言い方が好きではありません。
(無自覚にはやってしまっているかもしれませんが、それで自分が人を傷つけたり傷つけられたりして、なるべく使わないようにしています)
なので自民党で、たとえ政治家として尊敬する方で本当のことであっても「自民党の候補者を当選させなくては、その地方に公共工事だとかが来ませんよ」という「札束でペチペチ」するような言い方をされるのが好きではありません。(与党として泰然自若と、そういう物言いではなく違う部分をPRしてほしい)
恋愛でも「私のことが好きだったら、◯◯して」という物言いがNGパターンであるように。
そういう試すような言い方は、ゆるやかーな脅迫のように感じるのです。
「好き・嫌い」どう感じるのかは個人の価値観・尺度の問題ですし、好きだという方の「好き」を貶める意図はありません。政策だとか理念の話でもありません。
ただ今回の山本太郎氏の「当選して欲しかったら300万票以上を!」という選挙戦略。
「好き!」と感じる人がいるのと同様に、「私は好かん」と感じたというだけの話でした。
比例代表の「特定枠」まとめ
「特定枠」というのは、投票活動においては、ほとんど気にしなくていいでしょう。
ただし「比例代表」の投票用紙、「特定枠」の人の名前を書かなくても、党の得票数次第で受かる方々です。
むしろ同じ政党で気になる人がいたら、その人の名前を書いてあげる方が、候補者は喜びます。
また他政党の「比例代表」候補者と違い、山本太郎氏および、その他の「れいわ新選組」の候補者には仮に100万票以上集まっても、当選できない可能性があるーーそのことは理解した上で応援・投票されるのがよろしいかと存じます。
ーー以上、「難しくてわからない」と言われた、参院議員選挙の解説でした。
7月21日が参院議員選挙の投開票日です。
21日に行くことができない帯広市民の方は、期日前投票の会場と時間は、以下を参照ください。